為替介入だけで円安は止められるのか?

2026年8月 ドル・円・人民元の最新動向

先月、「円安の流れは簡単には止まりそうにありません」と書いたところ、その後、為替相場は予想以上に大きく動きました。ドル円は一時、1ドル=164円近辺まで円安が進みました。

ところが、その後、日本と米国による協調した円買い介入が行われ、一時は155円台まで急速に円高が進み「これで円安も一段落か?」そう思った方も多かったのではないでしょうか。しかし、為替はそう簡単ではありません。

8月14日のニューヨーク市場では、再び1ドル=159円台となっています。

つまり、164円 → 155円台 → 159円台と、短期間で大きく動いたことになります。

輸入業を長くやっている私からすると、為替がこれだけ動くと「円高になった」「円安になった」と一喜一憂すること自体が、あまり意味を持たなくなってきたように感じます。

3年間の為替動向表を見てください。

為替介入だけで円安は止められるのか?

今回、非常に注目されたのが、日本だけではなく米国も協調して円買いに動いたことです。そのインパクトは大きく、円相場は一気に155円台まで上昇しました。しかし、その効果は長く続かず、8月中旬には再び159円台まで円安方向に戻っています。

なぜでしょうか。

私は、為替介入は急激な円安に「ブレーキ」をかけることはできても、円安になる根本的な原因まで変えるものではないからだと考えています。日本と海外の金利差、物価、エネルギー価格、貿易収支、各国の金融政策など、為替を動かす要因はいくつもあります。私は最大の要因は急激な少子化による将来への不安ではないかと感じています。そのため、介入だけで長期的な円高に持っていくのは簡単ではなく、市場が許さないのだと思います。

現在、市場では日銀が金利をどうするのかも重要なポイントになっているようです。


中国から輸入する私たちは「ドル円」だけ見てはいけない

ここで、中国から商品を輸入している私たちにとって大切なことがあります。

ニュースでは、「1ドル159円」「160円を突破するか」といったドル円相場が大きく報道されます。しかし、中国からタオルを輸入している私たちは、ドルと円だけを見ていてはいけません。

人民元の動きも非常に重要です。

中国の工場では、原材料費(綿花)、人件費、電気代(石油)、加工費など、多くのコストが人民元で発生します。日本では当然、円で商品を販売します。その間にドルが入ってきます。

つまり、中国から輸入する商売では、「円・ドル・人民元」この3つの通貨の動きを見なければ、本当のコストは分かりませんし、工場との価格交渉も一方的なお願いベースになってしまい、お互いに納得出来るベースには辿りつけません。


円高になれば輸入業者は儲かる?

一般的には、円高=輸入業者に有利」と言われます。確かに基本的にはその通りです。例えば1ドル160円で仕入れていたものが150円になれば、同じドル価格の商品でも円換算した仕入価格は下がります。

しかし、実際の中国貿易はそれほど単純ではありません。

人民元がドルに対して高くなれば、中国工場側のドル建て価格に値上げ圧力がかかることがあります。さらに、中国国内の人件費、原材料費、物流費などが上昇すれば、為替が円高になっても商品の原価そのものが上がる場合があります。だから私は、「円高になったから安心」とは考えません。反対に、「円安になったから、もうダメだ」とも考えません。

大切なのは、その時々の為替を冷静に見ながら、商品原価全体を把握することです。


為替が動いても利益を守れる商売をすることを優先する

これからドル円が150円に戻るのか。それとも160円を超えて、さらに円安になるのか。正直なところ、誰にも分かりません。為替の専門家でも予想が外れる世界です。

まして、私たちタオル屋が為替を正確に予想することなどできません。では、どうすればいいのでしょうか。

私が大切だと思っているのは、「為替を当てること」ではなく、「為替が動いても利益を守れる商売をすること」

です。為替だけに頼るのではなく、商品の仕様を見直す。重量を見直す。梱包方法を工夫する。物流コストをチェックする。

そして何より、中国の工場としっかり話をすることも大切ですが、工場出荷価格を下げる交渉は今やるタイミングではありません。「現状維持をどこまで続けられるか?」が今出来る最良の商談ではないでしょうか?

輸入タオルの価格は、為替の動向も重要ですが、8つのコストの積み重ねで決まります。以下を参照ください。

長年取引している工場だからこそ相談できることもあります。しかし工場にも限界があります。タオルの価格の約20%は、商品本体を除く7つの費用がかかっています。この中で「⑤関税」に大きなコストダウンチャンスがあります。RCEP関税はご存知でしょうか?もし中国からの輸入で適用されていないなら、すぐの数%のコストダウンを実現することができます。以下をご参照ください。

詳しくは、輸出者(中国の生産工場)で原産地証明書が取得できるか、また輸入する業者に相談されるのが良いと思います。この資料を使わないで通関すると一般の関税率「7.4%」が適用されます。RCEPの書類を提出することにより関税は「7.4%⇨4.6%」にさがります。書類1枚追加するだけで「2.8%」の仕入れコストが下がります。

為替安が続く現在においては「2.8%」コストダウンは並大抵な努力でも実現が難しいと思います。


為替はコントロールできない。しかし商売は工夫できる!

私は長年、中国との貿易に携わってきました。その間には、円高の時代もありました。円安の時代もありました。人民元が安かった時代もありました。原材料が急騰したこともありました。そして、そのたびに、「もう中国では作れない」「輸入品は高くなりすぎる」という話が出てきました。

しかし、商売というものは面白いもので、その都度、何か方法を考えて乗り越えてきました。

為替相場を私たちがコントロールすることはできません。でも、商品をどう作るか。どこに無駄があるか。工場と何を話し合うか。お客様にどんな商品を提案するか。これは私たち自身で考えることができます。

売上は自分で作ることはできません。お客様に購入していただき、お金をいただいて成立します。一人では売上は立ちません。だからこそ、対立でなく協調が必要です。

1ドル159円でも160円でも、嘆いているだけでは何も変わりません。そこを考えるのが商売人の仕事ではないでしょうか。為替相場はこれからも大きく動くと思います。

「ドル、円、そして人民元」

この3つの通貨をこれからも注意深く見ながら、中国タオル輸入の現場から、毎月その動きをお伝えしていきたいと思います。