(プロジェクトに手を挙げて立候補してみた!)
会議室に作られたプロジェクトの説明会では、次期3代目の社長となるN専務の説明から始まりました。説明内容はほぼ以下の通りでした。
プラザ合意以降、円高に進行し、日本国内でのタオル生産を続けるには難しい状況になっております。我々は、業界のTOP企業として、新たな展開が求められています。現在タイにおける合弁工場も順調に進んでいますが、タイも日本と同じく綿花を輸入している国です。従って将来的な展望を考えると、綿産国での生産が重要になります。
ここで注目すべきは、今治工場で使用する綿花の80%がパキスタン産という事実です。この背景から、今治工場と連携し、私はパキスタンでのタオル生産プロジェクトの立ち上げを考えました。社員の皆さんの中でこのプロジェクトに興味を持ち、参加したいと考える人はこの中にいますか?と全員に向けて質問された。
私は、会議室の一番後ろに座っていて、N専務の質問に対してためらいもなく「ハイ!!!」と大きな声を出して手を挙げました。ところが、昨日盛り上がった仲間のメンバーは黙って下を向いているではありませんか!その会場で手を挙げたのは私一人だったのです。私にはためらいは全くありませんでした。他のメンバーは、砂漠のパキスタンと言う言葉を聞いただけで怯えてしまったようでした。午後の部の会議でも、誰も手を挙げなかったようでした。私は、ある言葉が気になっていました。
「梅津、今治も海外だからな、、、」N専務が最後につぶやいた言葉でした。
この時、私はお酒に対する人生の教訓も得ました。飲み屋で熱く語られた会話がどれだけ適当でいい加減なものかを痛感しました。時間とお金の無駄になるので、これからお酒は、楽しく飲むべきと悟りました。私にとって驚くべき経験でした。
知行合一という素晴らしい言葉は当時知りませんでしたが、お酒の力を借りては実行できませんよね。
しばらくすると人事部から呼び出され、今治事務所を新設に伴う人事異動の通知をうけました。ここが、パキスタンプロジェクトの重要な拠点になる説明でした。赴任の前に、社長に呼び出されました。社長からは、以下のような言葉を授けられました。
「今治でのあなたの行動や言動は、あなた個人だけのものではなく、会社全体を代表するものとなります。自らの行動、言動に責任を持ち、その意識を忘れずに仕事をしてください」とのことでした。かつて病気であった私を雇い続けていただ事に感謝し、気を引き締めました。
胸は高まり、桜が満開の今治に赴任する事になりました。
タオルバカ一代(今治も海外、プロジェクト始動)⑧ 完
(タオルバカ一代(桜満開の今治に赴任)⑨ へ続く)