もう何もかもが値上がりした感じの2022年ですが、まだおさまりはついてなくて、報道によれば2023年前半だけで7000品目以上が値上げの予定だとか。なかなか終結に向かわない、新型コロナウィルスとロシアのウクライナへの侵攻の影響も含め、まだまだ将来を見通せない厳しい局面が続いています。
タオルの価格も例外でなく、原因は、原料高x円安のダブルパンチだからなんです。ピークは過ぎたとは言え、まだ続いているこのメカニズムをご紹介したいと思います。
海外で作った商品を日本へ輸入する場合、だいたい海外工場とは「US$(米ドル)」で値決めをする事が多いと思います。
例えばですが、タオル代が1枚US$10.00とします。これを1,000枚輸入する時、US$10×1,000=US$10,000を工場へ支払います。海外工場へタオル代をはUS$(米ドル)送金する為に円をUS$(米ドル)に両替しますよね。この時の交換レートがタオル代に大きく影響してきます。例えばですが、為替が100円の時の計算式を見て下さい。
(例1)US$10.00x1,000枚x100円(交換レート¥/$)=¥1,000,000(仕入れ価格)
ところが、綿花の高騰でタオル代が20%上がり、交換レートも円安に大きく振れて25%ダウンしたとします。
US$10.00円のタオルがUS$12.00円x為替が125円となると、
例1と同じ商品であるにも関わらず、US$12.00x1,000枚x125円(交換レート¥/$)=¥1,500,000(仕入れ価格) になってしまいます。
ダブルパンチとはこの事なんです。同じ商品にも関わらす、仕入れ価格が100万円→150万円になり、50万円(5割)もアップしてしまいます!
綿花の相場表推移を見て下さい。
綿花の国際相場価格は、この3年間の最安値は2020年4月に記録したUS$1.40/㎏でしたが、2022年5月の価格は、ここ3年間で最高値でUS$3.61/㎏を記録しました。たった2年でなんと2.5倍も高くなってしまいました。2022年に入ってから急激に上がった綿花相場は、5月をピークに少しづつ下がり、2022年12月は2021年レベルまで戻り、少しほっとしています。
それに加えて、為替相場が円安に急激に触れています。円対米ドルの為替推移表も観て下さい。右端のグラフが急激に上がっているのがご理解いただけけると思います。
日本円は米ドルに対してこの3年間の中の最高値は2020年3月に記録した103.01円でしたが、10月の月初レートは131.2円で20年ぶりの安値を記録しています。最高値と最安値を比較しますと27.2%も違います!
100万円で買っていたタオルが、何と商品は同じなのに150万円(150.0%)に跳ね上がってしまうのです。同じ値段で売り続けていれば、売っている価格より買う価格が高くなってしまい、完全に赤字になってしまう事をご理解いただけると思います。
これが現在起きているダブルパンチの構造です。
原料の綿花は自然の作物なので、お米のように豊作や不作の年があります。綿は雨に弱く気候変動にも影響があります。もう一つの天敵は虫。綿に虫が湧いて不作の年もありました。相場は基本的には需要と供給のバランスで動きますが、投機筋のマネーが入ってくると予測もつかない相場を展開したりします。また、為替が綿花の高騰を助けてくれた事もありました。
綿花と為替の推移表(35年間)を作ってみました。
現在は赤丸で囲った、綿花高(US3.12/㎏)x為替安(118.6円)=370円/㎏のダブルパンチ状態ですが。現在と同等な綿花高があった2011年は、綿花高(US3.33/㎏)x為替高(79.8円)=265円/㎏、スーパー円高で救われたこともありました。(緑丸参照)
35年間の歴史の中でこれほど高騰したダブルパンチは経験がありません。その上、輸入するコンテナの海上輸送代が高止まりしたままになっていて、トリプルパンチです!
タオルは、綿花高x為替安x海上輸送費高のトリプルパンチに見舞われています。
価格に転嫁しなければ企業はやっていけません。どうぞご理解をいただければ幸いです。