タオルを海外で生産して取引をする場合、商品の流れ・書類の流れ・お金の流れがバラバラで動くことになります。
外国との取引で発生するさまざまなリスクマネージメントの中から「決済条件」についてご説明したいと思います。
貿易取引において決済条件は非常に重要ですが、工場との力関係や慣行の違いによって思い通りにいかないこともあります。決済条件は、一度決めてしまうと後から変更するのがむずかしいことが多いので、お見積の段階でしっかり交渉する事をお勧めします。
また、ご自分のリスクを少しでも減らすためにきっちり決済条件の内容を把握することも重要と思います。
決済条件を3つに絞ってご説明します。
①T/T送金 (Telegraphic Transfer) 「前払い」「後払い」がある
TT送金には、「(A).前払い」と「(B).後払い」があります。工場が代金を受け取ったあとに商品を船積みするのが「前払い」、一方買主が商品を受け取ったあとに代金を支払うのが「後払い」です。
「(A).前払い」のタオル工場の決済条件は、「契約時30%」&「出荷前70%」を支払います。 (このバランスが一般的な契約方法です)
まず輸入者(買主)は、契約が成立しましたら総額の30%を輸出者(売主)の銀行に送金し、入金を確認してから輸出者(売主)は生産を開始します。契約とは、商品決定+価格決定+納期が決定し、P.O(Purchase Order)を締結した時点を言います。
残金の70%は、輸入者(買主)は船積日の「前日」までに輸出者(売主)の銀行へ送金が着かねばなりません。
輸出者(売主)は、その入金が確認出来てから商品は船積みされますので、前日までに入金が確認出来ないと船積みされなくても文句は言えません。
「前払い」条件は、輸出者(売主)は代金を受け取ってから出荷するのでリスクはありませんが、輸入者(買主)にとっては契約した通りの商品が届くかわからないリスクがあります。
初めての取引の場合、信用関係が築かれていませんので、両方に存在するリスクをどのように決めるか?
見積の段階でしっかり相談して決めておくことが必要です。
「(B).後払い」のタオル工場の決済条件は、「契約時30%」&「出荷後2週間以内70%」を支払います。 (このバランスが一般的な契約方法です)
まず輸入者(買主)は、「(A).前払い条件」と同様に契約が成立しましたら総額の30%を輸出者(売主)の銀行に送金し、入金を確認してから輸出者(売主)は生産を開始します。契約とは、商品決定+価格決定+納期が決定し、P.O(Purchase Order)を締結した時点を言います。
残金の70%は、輸入者(買主)は船積日から起算して「2週間以内」に輸出者(売主)の銀行へ送金しなければなりません
輸入者(買主)は、「契約時30%」だけ前払いになってしまいますが、「残金70%」は「出荷後2週間以内」に送金すれば良いので、中国で生産した場合は2週間以内に商品は日本の倉庫に到着するので、到着商品をチェックしたあとに送金すれば良いので安心です。
この条件は、輸出者(売主)にとって、輸入者(買主)から送金されないと言うリスクがあり嫌がられますが、輸入者(買主)は商品が届いたあとに送金すれば良いので、輸入者(買主)にとってメリットが大きい条件です。
日本人的には「前払い送金」は馴染みがないので、よほど工場との信頼関係がないと二の足を踏んでしまうと思います。但し、文化(常識)の違いかもしれませんが、中国の工場は前払いが常識で、工場の財務担当者が入金確認に目を光らせています。入金が確認出来ないと出荷をSTOPする権限を有していますので営業担当者では説得出来ません。この条件は、輸出者(売主)にとってのリスクマネージメントですが、輸入者(買主)にとっては商品が届く前に送金しなければならないリスクが大きいですよね!
残念ながらこの条件が中国工場では一般的なので、意地悪している訳ではないことをご認識下さい。
この決済方法には船積書類などの条件がつきませんので、「送金のタイミング」と「送金金額のバランス」を見積の段階で相談して決めることが重要です。
結論としては、TT送金決済の場合はどちらかがリスクを負わなければならない条件ですので、最初の取引ではどうしても工場の条件に従う事になってしまいがちですが、回数を重ねて信用度も上がれば条件緩和の交渉も可能になってくると思います。
初めの取引はそんな意味で次に説明する「L/C」(Letter of Credit)を使われるケースが多いと思います。
②L/C(信用状付き荷為替手形取引)
①TT送金決済の場合はどちらかがリスクを負わなければならいことをご説明いたしました。「前払い」の場合は、輸入者(買主)が商品を受け取る前に支払うリスク、「後払い」の場合は、輸出者(売主)が代金を回収出来ないリスクが存在します。初めての取引の場合、相手との信頼関係が築けていないので、どちらにとっても不安(リスク)が存在します。
このようなリスクを回避する為に利用されるのが「L/C(信用状)」決済です。
L/C(信用状)は、銀行が介在することにより、輸入者(買主)の商品入手のリスク、輸出者(売主)の代金回収のリスクを回避することが出来るために両者にメリットがあります。
「L/C(信用状)」は、輸入者(買主)の取引銀行が、輸出者(売主)に対して輸入者に代わり代金の支払いを確約した保証状です。L/C(信用状)を発行した銀行は、輸入者(買主)に万一の事があっても、輸出者(売主)がL/C(信用状)条件通りの書類を提出すれば、輸入者(買主)に代わって代金を支払いします。
海外の貿易では、「商品」「お金」「書類」の流れに時間差がありますが、L/C(信用状)には「商品」「お金」「書類」の流れの必要条件が細かく決められています。輸出者(売主)が代金回収のためには、信用状条件に合った書類を銀行に提出しなければならず、輸出者(売主)に対して契約通りの取引を促すことが出来ます。
一方、L/C(信用状)開設にはコストがかかること、輸入者(買主)と取引銀行との間の与信がないと発行してもらえない場合があります。輸入者にとってのデメリットはその2つだと思います。
L/C(信用状)の取引を希望される場合は、取引の銀行に相談してみることをお勧めします。
L/C(信用状)における決済フローを図にしてみました。
かなり複雑な取引形態ですので要点をかいつまんでご説明します。
正確に言いますとL/C(信用状)取引とは、「信用状付き荷為替手形決済」の取引方法で、輸入者の取引銀行が「荷為替手形」による決済を保証するものです。
輸出者(売主)より輸出された荷物の荷為替手形は、輸出地銀行経由で輸入地銀行に取り立て依頼され、輸入地銀行は輸入者(買主)に呈示、決済(引き受け)を引き換えにB/L(船荷証券)を渡します。輸入者(買主)は受け取った、B/L(船荷証券)で船から荷物を受け取ることが出来ます。
この決済方法のもう一つの特徴は、輸出者(売主)が荷為替手形を輸出地銀行に提出すれば、すぐに銀行から代金を回収できることにあります。それは信用状によって輸入地銀行から輸出者(売主)への支払いを確約しているからなんです。
L/C(信用状)の開設は少し面倒でコストはかかりますが、貿易の中で一番を安心な方法と思われます。
③D/P D/A (信用状なし荷為替手形取引)
D/A,D/Pとは、「荷為替手形決済」による取引方法ですが、「L/C(信用状)」なしのため、輸入者の取引銀行による「荷為替手形」による決済の保証はありません。つまり、輸出者(売主)は、「代金回収の保証がされない」のでリスクがあり、輸入者はD/A取引の場合は「前払い」となりリスクが存在します。
D/P(Documents against payment)とは、輸入者(買主)が「為替手形」を「決済する」ことで「B/L(船荷証券)」を入手できる契約です。これは、荷物の到着前に全額商品代を支払うことになりますので輸入者(買主)には負担がかかりますが、輸出者(売主)にとっては輸入者(買主)が代金を支払うまで銀行はB/L(船荷証券)を渡さないので、代金回収のリスクは少し小さくなります。
D/A(Documents against acceptance)とは、輸入者(買主)が「為替手形」を「引き受け」、手形の期日支払いを確約することで「B/L(船荷証券)」を入手できる契約です。手形の期日には「シッパーユーザンス」をつけ、例えば「D/A 30days after sight」という記載があれば「手形を引き受けた日から30日後に支払う」という意味になります。これは、荷物の到着後に全額商品代を支払うことになりますので輸入者(買主)にとってはメリットがありますが、輸出者(売主)にとっては輸入者(買主)が代金を支払う前に銀行はB/L(船荷証券)を渡してしまうので、代金回収のリスクは大きくなります。
信用状なしに為替手形決済(D/P,D/A)における決済フローを図にしてみました。
信用状なしに為替手形は、輸出者(売主)にとってメリットはありませんが、輸入者(買主)にとっては、D/Aでシッパーユーザンスをつけることで実質後払いになり、L/C(信用状)開設コストもなくなりメリットは大きいと思います。